← 記事一覧に戻る
仕事・現場

温室育ちの猫、野良猫になる|独立して知った一人親方のリアル

温室育ちの猫、野良猫になる|独立して知った一人親方のリアル

個人事業主(一人親方)が綴る、ねこ丸ブログへようこそ。
脱サラ家庭の内部事情を、夫婦で執筆しております。

温室の中にいた頃

前に勤めていたのは、そこそこの会社でした。

福利厚生も、労働時間も、安全面も。
法律に沿って、きちんと整えられていました。

当時の私は、それを当たり前だと思っていました。

ルールがあって、それをみんなが守る。
そういうものだと、疑いもしませんでした。

残業が何時間を超えたら注意が入る。
連勤は何日までと決まっている。
有給が残っていれば、消化するようせかされる。

当時は内心、うっとうしく感じていました。

でも、そんなことが当たり前に回っていたのです。

今思えば、私は温室の中にいたのだと思います。

もちろん、人間関係のつらさまでは守ってもらえません。
そこは会社のルールや法律で、どうにかなるものでもありませんから。

それでも、安全のことや就業規則の面では。
守られていることに気づかないくらい、守られていました。

「やっていける」その自信が、あった

独立する前。

私には、妙な自信がありました。

高校を卒業してから、十数年。
決してぬるい環境ばかりではありませんでした。

会社の中でも、いろんな猛者たちにもまれてきました。
一癖も二癖もある先輩、強烈な上司。

その中で、なんとかやってきた。

だから、独立しても大丈夫だろう。
どこへ行っても、やっていける。

そう思っていました。

今になって思えば。

辞めたい気持ちが先行して、先のことを考えるのを完全に放棄していた。

根拠のない自信。

私は、あまあまのあまちゃんだったのです。

ねこ丸くんアイコン(はてな顔)
会社でもまれてきたし、
どこでもやっていける…はずだった

野良猫になって、知った世界

独立して、ありがたくもいろいろな取引先の現場に出させていただきました。

そこで目にする光景に、私は思わず固まりました。

「え、それ、そのままいくんですか?」

心の中で、何度そうつぶやいたか分かりません。

詳しくは伏せますが。
安全に対する感覚が、私の知っているものとは、まるで違ったのです。

「あの、仕事中ですよ?そんなことするんですか…」

「え、これでいいんですか?」

2年経ったいまなお、幾度となくさまざまな仰天を目にします。

目にするものだけでは、ありません。
耳に入ってくる話にも、たびたび「えっ」と固まりました。

温室育ちの私の当たり前が、当たり前ではありませんでした。

まるで、別世界に迷い込んだよう…。

そこは、独自の「掟」で回る世界だった

私が飛び込んだのは、まるでアウトローな世界でした。

もちろん、犯罪的な意味ではありません。

ただ、現場の空気が、なにより優先される。
会社員のころのように、決まりごとが文書になっているわけでもない。

その場その場の”掟”が、ルールになる。

そんな、独自の秩序で回る世界だったのです。

契約書なんて、交わさないことも珍しくない。
個人や小規模法人とは、多くが口約束。(もちろん小規模でもしっかりしている会社もあります、誤解なきように)

未入金トラブル以降、書面化は自分に義務づけていますが。
なんせ、こちらは仕事をもらう側。

強く言い出せないことも、正直いまだにあります。↓↓↓
未入金から自分を守る方法【実践編】|一人親方の防止チェックリスト

契約書はあっても、明らかに私が不利な条件だったケースも。

そこが、ムズカシイところですね。

支払いのタイミングも。
仕事の日程も。あっけなく飛びます。

多くが、親方の一存で決まっていく。

昨日と今日で、言うことが変わることもある。

温室の中で、決められたルールに守られてきた私にとって。
それは、理解の外にある世界でした。

ねこ丸くんアイコン(泣き顔)
ルールブックが、どこにもない…

自給自足で、天敵に脅かされる日々

会社にいた頃は、守られていました。

仕事は、優秀な営業さんが取ってくる。
給料は、毎月決まった日に振り込まれる。
何かあれば、組織が後ろにいてくれる。

でも、野良猫には、それがありません。

エサは、自分で探しにいく。
明日の仕事があるかどうかも、自分次第。

そして、油断すれば足元をすくわれる。

強烈な個性の持ち主にも、何人も出会いました。
めげそうになった夜も、一度や二度ではありません。

たった2年ほどの間に。
これまでの人生では味わったことのない衝撃を、いくつも経験しました。

自給自足で、天敵に脅かされながら生きる。

その姿は、まさに。
温室を出て、野良になった猫そのものでした。

マグロに追われるねこ丸くん

でも、悪いことばかりじゃなかった

ここまで書くと、ひどい世界のように聞こえるかもですが(笑)

一方で、そうとも言い切れない面も。

ルーズだからこそ、融通が利く。

「ちょっと今日は早めに上がらせて」
そんなわがままが、通ることもある。

書類でガチガチに縛られていない分、人と人との距離が近い。

困ったときには、損得抜きで助けてくれる。
そんな、なぁなぁの中にある温かさも、確かにありました。

温室にいた頃は、こんなことあったかな…。

きっちりしている世界には、きっちりした冷たさがある。
ルーズな世界には、ルーズなりの人情がある。

どちらが正しいという話では、ないのかもしれません。

(もちろん安全面に対しては賛成はできませんが)

ねこ丸くんアイコン(したり顔)
毎日が規則的な流れ作業だったような気がする
今は波乱万丈だけどそれはそれでいいかも…

外部の人間だから、聞こえてくる本音

一人親方は、どこの組織にも属していません。

だからこそ、なのでしょうか。

現場では、いろんな方が本音を漏らしてくれます。

社内では言えないこと。
上司にも、同僚にも打ち明けられないこと。

外部の私は、いわば中立地帯のような存在。
利害がぶつからないぶん、話しやすいのかもしれません。

気づけば、聞き役になっていることも珍しくありません。

そう。
先ほど書いた、あの「えっ」と固まった話の正体です。

中には、返す言葉が見つからないこともありました。
詳しくは、もちろん書けません。

でも、それも含めて。
組織の外に出なければ、知らないままだった景色。

野良猫は、自分でうまくやっていくしかない

野良猫には、守ってくれる誰かがいません。

だから、自分でうまくやっていくしかない。

でも、それは。
「なんでもかんでも、その世界に染まる」ということでは、ないと思っています。

安全のこと。
約束を守ること。
自分が大事にしたい、信念。

温室の中で身につけたその芯だけは、手放したくない。

たとえ周りがそうでなくても、私は私のやり方で貫きたい。

その上で、融通が利くこと。
人と人との距離が近いこと。

野良の世界にある”良い面”は、自分の目で見て、選び取っていく。

その世界の掟に、ただ流されるのではなく。

自分なりの掟を、少しずつ作っていく。

それが、温室育ちの猫が。
野良として生きていくための、私なりの答えなのかもしれません。

ねこ丸くんアイコン(笑顔)
染まるでも、拒むでもなく。
選び取っていく!

……なんて、偉そうに言ってますけど。

実際は、まず仕事をもらわないことには始まりません。

芯だなんだと言えるのも、明日の仕事があってこそ。
そこは分かっているつもりです。

明日も、現場に立ちます。


この野良の世界で、私はたくさんの”濃い人たち”に出会いました。

そのひとりひとりが、強烈で、忘れられません。

その話は、また別の機会に、じっくり書いていこうと思います。


※注意・免責※

この記事は、あくまで私自身が経験した一部の現場での話であり、個人の体験と主観にもとづくものです。

業界のすべてがこうだというわけではありません。また、記事内で触れた事柄について、その是非を断定するものではありません。

独立する私へ そこは温室じゃない(ねこ丸のポスター)

執筆:ねこ丸